不機嫌なアルバトロス
駅の周りに大きなマンションはひとつしかないので、ある意味わかりやすい場所で助かった。


住所とか、そういうの、二回しか行ったことないし、よく覚えていない。


…どちらも素面ではない状態だったし。



夜の道を眺める余裕もなく、私は進行方向の信号が赤になることのないように、ずっと睨めっこしていた。



「ありがとうございましたっ」



タクシーを降りるとすぐにコンビニを通り過ぎ、エントランスに上がった。



乱れた息を整えつつ、集中インターホンを鳴らす。



1107、1107…



記憶の中にある中堀さんの部屋番号を何回も唱えて確かめた。



酸欠のせいではない、手の震え。



電話の時と同じように。


鳴ることのない、インターホン。



それは、家主の不在を告げていた。



無駄だと分かっていながら何度も何度も同じ番号を押し続ける。


エントランスホールはとても明るい。



でも、私には暗く見える。



やがて私は何度も押したボタンから、力なく腕を下ろした。




「嘘…」



呟いてよろよろと後ずさり、後ろの壁に背中をぶつけた。




嫌な予感は、的中していた。

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