不機嫌なアルバトロス
「アオならもうここにはいないよ」



淡々と言っているようだが、どこか嘲笑うような調子が含まれている。




「あの…どこに…」



「教えるとでも思う?」




思わない。



思わないけど。



少しの希望に縋るように、思わず訊ねてしまった。




「もう、会えないから。忘れた方が良いよ。」




冷たく突き放すように言われた言葉は、心に突き刺さる。


私はさっきから立ち尽くしていて、燈真はポケットに手を突っ込みながら自動ドアの前でそんな私を見ている。




「…契約…」




「―え?」




やがて、ずっとひっかかっていたキーワードが、口から零れた。





「契約違反って…なんですか…?」





燈真の目が僅かに見開かれた気がする。



エントランスホールとはいえ、床は大理石のようだ。



冷たさはダイレクトに伝わった。


「ふーん…そっか。アオはそんなことも、花音ちゃんに話してたわけか。」



考え込むようにして呟いた後、ホント危なかったんだな、と燈真は小さく溢した。




「そー…だね。とりあえず、、花音ちゃん…今開けてあげるから、中に入らない?」




ここのマンションには、集中インターホンのあるエントランスと、鍵で開く自動ドアの向こうに更に広いホールが設けられており、ゲスト用なのか、大きなソファが置かれている。



燈真はそこに座るよう、促した。



意図が掴めず、私は躊躇いつつも、勧められるままにソファのはじっこに座る。




向かい合わせに燈真も腰を下ろした。





「…今から、、、俺が言うのは、単なる世間話、だ。誰の話でもない。」




燈真はそう言うと、腕と足を組み―





「おまけ、だよ?」




この状況に似つかわしくないワードを発した。





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