薄紅
……そこには、さっき見た

ワイシャツとネクタイを身に付けた、

私と同じくらいの歳の青年が倒れていた。

心臓の辺りに手をあて、

聞きなれない、少し不気味な音をたてて呼

吸をしている。

「だっ…大丈夫ですか!?今、救急車呼びま

すから!!」

こんな状態で、大丈夫なわけなじゃん、と

思いながらもポケットに入れていたケータ

イに手をかけた。すると、その手を弱々し

く掴まれた。掴んだのは、もちろん彼だ。

「……………」

必死に何かを言おうとしてるけど、

声がかすれていて聞き取れない。

これ以上こんなにも辛そうなのに喋らせる

のもよくないのかなとも思うけど、

やっぱり救急車呼んだ方がいいのかな?
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