守ってダーリン!
ひとしきりみんなで盛り上がり、店内に落ち着いた雰囲気が流れたタイミングで、登美さんが食べ終わったお皿を順番に回収し始めた。

市谷さんの前にやって来ると、登美さんは「あら?」と言って首を傾げる。

「市谷くん、ここのボタン、取れかかってるわよ。」

登美さんは、自分の袖口のあたりをつんつん、と指さす。

「あ・・・ほんとですね。」

市谷さんが手首を返すと、確かにジャケットの袖口のボタンが、糸がゆるんで取れかかっていた。

「私がつけてあげたいところだけど・・・里佳ちゃんの仕事だわね。」

登美さんはそう言うと、私にパチンとウィンクをする。

「あ・・・そうですね。じゃあ、後でつけますね。」

私の言葉に、市谷さんは驚いたように眉を上げた。

「里佳がつけてくれるの?」

「はい。縫い物は・・・あんまり、得意じゃないんですけど。」

「いや。上手い下手はどうでもいいよ。里佳がつけてくれるなら。」

目を細めて優しく言われ、私の胸は跳ね上がる。

市谷さんが、人前でこんなことを言うのは珍しい。

「な、なんか暑いですね・・・。」

「そうだなー。オジサン、上着脱ごうかなー。」

私たちのやりとりに、また、村上さんたちが騒ぎ出した。

その後、もう一杯ずつお酒を飲んだ私たちは、時計の針が22時になるのを見届けると、みんなに「また来ます」と挨拶をして、にぎやかなお店を後にした。
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