いろはにほへと
「あ…ら?」
勿論、私一人だと思い込んでいただろう母は、目の前の光景に固まる。
「どうも、初めまして。」
私の左側で早川さんがきびきびと一礼。
「あ、初めまして」
私の右側に居るトモハルも挨拶する。
「突然押しかけて申し訳ありません。何しろ時間がなかったものですから。実は私こういう者でして―」
早川さんが名刺を差し出し、母はそれを固い動作で見つめた。
そして、一呼吸あった後に。
「…ち…」
「ち?」
一同が母の一声に首を傾げたと同時。
「ちょっとー!!!!!あなたぁ~~~!!!玄関に怪しい人達がっひなのを操ってるわぁ!!!!!警察呼んで頂戴!!!」
母が家の中を振り返って大声で叫んだ。
「え、ちょっと、お母さん…ち、違うんです…」
「私はいつからあなたのお母さんになったって言うんです!?私は認めませんからねっ!」
慌てる早川さんに、明らかに大きな勘違いをしている母。
「怪しいよねぇ、やっぱりねぇ…」
マスクをびよよんと引っ張り、何やら憂いを帯びた表情のトモハル。
その全ての中で、私はひとり、大きな溜め息を吐いていた。