いろはにほへと
早川さんが直ぐ様フォローに入る。
「テレビと違って、そこまで露出は多くないですし、あくまでもメインは曲の方なので―」
「私は、そんなこと訊いていませんよ」
父はにこりと笑って、早川さんの言葉を遮った。
父の持つ独特の雰囲気は、表現しがたいものがある。
柔らかいと言えば、とても柔らかい。
纏う空気は、温かい。
だが、芯の通った強さを内に秘めている。
だから、要らないものは要らないというし、駄目なものは駄目だった。
とりわけ一度決めた事となると、頑として譲らない。
まぁ、つまりは、笑ってても怖いということだ。
案の定早川さんの顔が引き攣っている。
「私はね、生きていくのに必要なものはそんなに多くないと思ってるんです。」
やがて父がぽつりぽつりと呟きだした事は、私が気に入っている父語録の内のひとつだった。
「その原則は何にでも合わせる事が出来るんです。例えば、そう、、」
言いながら、父はゆっくりと私を振り返る。
「今回のことで、大切なことも、そんなに多くないですね?」