いろはにほへと
結局の所、決断は自分で下しなさい、と言われた訳だ。
今、全員の視線は、私に注がれている。
―私、が、どうしたいのか。
勿論、面倒なことはしたくない。
それが自分のモットーだった。
厄介なことには関わらない方が良い。
ひたすら地味に、誰とも関わらずに。
けど。
一番厄介なものに、自分は関わってしまった。
父の奥に見える、トモハルと目が合った。
へら、と笑うこの男。
心底、厄介な人間で、いつも突然現れては、厄介事を持ち込んでくる。
ああでも自分は。
どうしてか、この人の事を好きになってしまって。
この気持ちのお陰で、トモハルの歌の意味を知ってしまった。
伝えるつもりもないけれど。
届くとも思ってないけれど。
でもちゃんとさよならしなくちゃならない。
ならば欲張って、もうひとつ、思い出を作ってもらっても良いだろうか。
「私…受験生、なので…」
五月蝿すぎるこの人と、過ごす時間がなくなったら、たぶん。
「この夏休み中に終わるのであれば、やっても…良い…です…」
きっとすごく静かになるんだろうな。