冷たい手
「うわっ?!」
ミカは驚いた声をあげる。
その声に、ダイチも思わず飛び上がった。

「あ、あの、おはようございます!すみません。驚かせてしまって!」

ミカはダイチにおじぎをする。ダイチもそれを見習い、軽く頭をさげる。

「わ、…私の!!」

「…ふ、ふう。 私の、名前は、佐藤、美香です。佐藤は、一般的な佐藤の字で、美香は、美しく香る。の、美香です!」

おとなしく言い直したミカ。ダイチはそれを黙って聞いていた。


やっぱり無口な人だ。でも、無口すぎる。
「あの…?」と、ミカが口を開いたとき、ダイチはメモを指さす。
続いて、自分の携帯電話に、指している指を移す。

「え?あぁ、あの、で、電話…? 動けるときはしてはいけなかったですか?」

怖い!この人、怖いよ!なんか喋ってほしい…
ミカのそんな気持ちとは別に、ダイチは首を縦に振るだけだった。
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