現実は小説よりきなり
「と、とにかく、む、向こうに行ってて」
この狭い空間に居られるのは困るから。
「へぇ~俺にそんな事言って良いのか?」
何かを企んだように目を三日月にした琉希也君に、何かが胸の中でざわめいた。
なっ...なに?
その意味ありげな笑い方は...。
「べ、別に問題ないと思うけど」
弱味を握られてる覚えもないし。
多分...大丈夫。
「へぇ。俺、知ってんだけどな」
そう言いながら、私の奥にある壁に手をついた琉希也君。
ちっ、近いから!
バクバク跳ねる心臓。
ほんと、勘弁して。
「なっ、何を知ってるの?」
思い当たることが無いんだけど。
「こんな所で言っていいのか?」
「いや、だから、何を?」
何もないと分かってるのに、額から汗が伝い落ちたのは何故だろうか。
「ククク...じゃ、ヒント」
「ヒント?」
と首を傾げた私に、琉希也君はニッコリと笑って頷いた。
それからおもむろに私の耳に顔を寄せて囁いた。
あるキーワードを!!!
「...小説」
「...っ..」
思わず息を飲んだ。
いや、待って。
それって....それって。
ワナワナと口を震わせながら、近付いた時と同じ様にゆっくりと離れていく琉希也君を見つめた。
「なっ?それって秘密じゃねぇ?」
とニヤリと笑った。
ササ~ッと身体中の熱が引いていく。
知ってる、知ってる。
彼は私の秘密を知ってるんだ。
誰にも秘密の重要事項を。
なぜ?
どうして?
彼が?
混乱した頭に浮かぶのはクエスチョンマーク。
どうするの?
頭の中の小さな私が聞いてくる。
しらを切り通すしかないよ。
でも、無理でしょ、これ。
目の前の琉希也君はニコニコしてる。
くっそぅ、無駄に綺麗な顔してるのが、ムカつく。
「ここは...一つ内密に...」
今ここで話すのは不味いから。
「良いぜ、了解。その代わり夜の九時に来るから、窓開けとけよ」
良いな?と言った琉希也君は私が頷いたのを確認すると、満足そうにキッチンから出ていった。
「はぁ~~~マジかぁ」
息を吐き出しながらその場にしゃがみこんだ。
あり得ない。
ほんと、色々有り得ないんですけど。
どうしてバレてるのよ。
もう、どうすんの?