現実は小説よりきなり







ドンドン小説の話題で盛り上がっていく4人に対して、私はバクバクと有り得ないほど心臓を動かした。


「私、嵐斗さんのファン登録してるの」

と眞由美が言えば、

「私も私も。それに感想コメントもレビューも何度もしてるよ」

と美樹が言う。


えっ?どれだ?

美樹のハンドルネームってなんだろう。


今までは見たコメント欄を引き出したら引き出す。

読者様からのコメントやレビューは毎回欠かさず見てる。

応援してくれてる人が居るのはとっても励みになるし、やる気にも繋がるもん。

何度も読者様からのメッセージに励まされたし。


もちろん、時間があれば返信もしてるんだけど、なにぶん人数が多くて全てに対応出来てないのが現状だ。




「あの人って私達世代の心掴んでるわよね」

霞が染々言う。


「あ。それはそうね。等身大の話だから面白いしね」

可奈までそんなに誉めてくれるの。


あぁ、嬉しすぎる。


自然とにやけてくる顔を隠すために俯いて掌で顔を覆った。


そんな私を他所に4人は盛り上がり続けた。


チンと機械音がなって、エレベーターが一階に到着した時は、心底ほっとしたのだった。



人に秘密にするってことが、こんなに辛くて大変なのだと、初めて知った。



モヤモヤとしたものは胸の奥に残ったままだけど、今の私にはどうすることも出来ない。


簡単にカミングアウト出来ないほどに、嵐斗と言う空想の人物は大きくなりすぎたのだ。


隠し事、されど隠し事。


私の唯一の癒しが私を悩ませる事になるなんて思わなかったなぁ。





複雑なモヤモヤを抱えたまま食べた夕飯は、あまり味がしなかったのは言うまでもない。








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