現実は小説よりきなり
帰宅途中の生徒が一人で歩いてる俺を見て何事か?と興味津々に視線を送ってくる。
ほとんど、あいつらと一緒に居るから俺が一人なのが相当珍しいんだろう。
チラチラ向けられる視線に苛立ちながらも、木下嵐の後を追う。
つうか、見てくんなよ。
つけてんのが、あいつにバレちまうだろうがよ!
ヒソヒソ話ながら俺に視線を送ってくる連中をジロリと睨み付ける。
前を行く木下嵐は、相変わらず周りのざわめきに気づく様子もなく進み続ける。
あいつは、周囲の事なんて見てもなけりゃ気にする様子もない。
ま、俺としては好都合だけど。
どんなけ周りに興味ねぇんだよ?
フッと口元が緩む。
駅に向かって歩き続ける木下嵐は、一軒の喫茶店の前で立ち止まった。
俺は物陰に隠れて様子を見る。
「つうか、俺は何をしてんだ?」
ストーカーっぽい自分に溜め息を漏らす。
ドアを開けて店内へと向かった木下嵐を見送ってから、俺は喫茶店の前まで足を進めた。
ガラス張りの店内を伺う。
木下嵐は足を引き摺りながら店内を奥へと向かって歩いていく。
あいつの向かう先に居るのは、スーツを着た20代前半の男の姿。
「...チッ、男と会う約束してたのかよ?」
どうしてだか苛々した。
木下嵐を見つけた男は笑顔で手を上げる。
木下嵐はそれに答えるように手を振りながらそいつに近寄ってく。
つうか、んだよ、その笑顔。
イライラすんな。
俺が助けてやった時には作り笑いしてやがった癖に...。
あ~どうしてだか、むしゃくしゃする。
木下嵐に集中しすぎてた俺は不意に自分に向けられる視線に気づく。
チッ...窓側に座る女と目が合う。
訝しげにこちらを見ながらも目があった途端に頬を赤く染めた女。
自分の前に座る女とキャーキャー言い出した。
不味いな...このまま、覗いてんのはダメだ。
仕方ねぇ、店に入るか。
なぜか帰ると言う選択をしなかった俺は、喫茶店のドアを押し開けて中へと入った。
「いらっしゃいませ」
の声と同時に近付いてきたエプロン姿の店員。
俺は店内を見渡して木下嵐の座る席に近い席を見付けた。
ついたてを挟んで一つ手前の席が良い具合に空いてる。
あの場所なら見つからずに座れるだろ。