現実は小説よりきなり
「木下、少しでも変なことがあったら直ぐに言うんだぞ?では、少し遅くなったがホームルームを再開しようか」
完全には納得しきれてない先生はそう言いながら教壇へと戻っていく。
ゴミ箱を手にして元の場所に戻ろうと踵を返した委員長に声をかけた。
「委員長、ありがとう」
「いや、当然の事をしたまでさ。これからは僕も木下さんの周りに目を配るよ」
振り返った委員長は爽やかに微笑んでから、再び背を向けた。
あの人、本当に良い人なんだね?
ってか、名前なんだっけな?
覚えてないなんて失礼な気がしたので、後で加奈に聞こうと心に決めた。
先生が教壇に戻った事でザワザワも収まり、ホームルームは再開された。
眞由美と加奈がこっそり振り返ってわたしを見ると、良くやった!と言いたそうに優しく微笑んでくれた。
ジンと温かくなる胸に顔が綻ぶ。
中学の頃の私なら、きっと先生に何も言わずに堪えていた。
味方なんて居なくて、他人なんて信用できなくて。
だけど、今は眞由美や加奈が居てくれる。
ちょっと煩いけど美樹だって。
だから、今回はこんな風に出来たんだろうと思う。
私はいつも間にこんなにも強くなれてたのかな?
中学の頃に傷付いた心は、今周りに居る皆が修復してくれてたんだと改めて思う。
そして、携帯小説を書く事で色々な人の存在を知り、言葉を貰い、私は成長してこれたのかも知れない。
つい最近まで目立つことが怖くて仕方なかったのに、開き直った事で心が軽くなるんだと分かった。
誰の差し金か知らないけど、私は負けない。
今回は支えてくれる人達が居るから、怖くない。
あっ!そうだ、忘れないうちにメモっとかなくちゃ。
先生に見つからない様にポケットからスマホを取り出して、私が小説を書いてるサイトを開いた。
さっきのシチュエーションを下書きに書き込む。
これでも小説家の端くれだもん。
ネタはしっかりとメモります。
フフフ...と口元を緩めながら画面を慣れた手つきでタップしていった。