現実は小説よりきなり






琉希也君は女子達が頷いた事で気持ちが済んだのか再び動き出した。


静まり返った廊下を琉希也君は堂々と歩いていく。

手を引かれる私も歩き出す事になるんだけど、どうしても俯き加減に歩いてしまう。


こんなに見られて普通に歩ける訳がない。

私は目立つことになれてないんだ。


静かになっても視線は穴が空くほど向けられてる訳で。


ほんとさ、自分が携帯小説みたいな事になるなんて思いもよらなったよ。



「どうかしたか?嵐」

「.....」

いやいや、どうかしたかじゃないし。


琉希也君は普段から見られるのには慣れてるかも知れないけどさ。

私はこんなの慣れてないのよ。



「何かあったら直ぐに言えば良いからな?お前を守るのに力は惜しまねぇ」

静かになった廊下では琉希也君のイケボイスは良く通る。

周囲の人達が息を飲んだのが分かった。


普通ならキュンて来ちゃうセリフなんだけど、私はそれどころじゃない。


「...あ、うん」

取り合えず返事を返して、今日の小説の更新にはぜひ今のセリフを使おうと心に誓う。


周囲の視線が気になるとか思いながらも、小説から離れなれない私は結構腹が座ってるのかも知れない。



「嵐ちゃ~ん!」

聞き覚えの叫び声と駆け足に正面に顔を向ければ、満面の笑みで美樹が駆け寄ってくる所だった。


「...美樹」

と名前を呼んだ私の声と

「...チッ..」

隣の琉希也くんから出た不機嫌な舌打ちが重なる。



「んもう!琉希也のバカ!放ってかないでよ」

目の前までやって来た美樹は、腰に手を当てて琉希也君を睨み付ける。


「知るか。て目ぇが遅せぇんだよ」

睨み返した琉希也君。


はてさて...なんのことだろうか?


「嵐ちゃん聞いてよ。私が嵐ちゃんを迎えに行くって言ってんのに、琉希也やったら私に黒板消しを押し付けて置いていったんだよ」

美樹は相当ご立腹らしい。


私を迎えに来るつもりが、琉希也君に出し抜かれたというわけね。

ってか、私は美樹のお迎えの方が良かったなぁ。


「そうなんだね。帰りからは美樹が来てね」

ここは話の流れに乗って私の希望を言っておこう。


「ああ"?」

いやいや、そんな不機嫌に見下ろされても困りますよ。

なぜか、琉希也君が私を見つめる。



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