現実は小説よりきなり
美樹から流れてくる悲壮感に、鳥肌が立った。
こんな落ち込み方しなくても...言いかな?
「えぇ..っと..美樹」
困った何て声をかけたら良いんだろう。
「...嵐ちゃ~ん」
小さく震える美樹の声。
「ん、まぁ、えっと...そのうち、なんとかなるかな?」
多分...保証はないけど。
「ほ、本当。カレーを黒焦げにする私でも大丈夫?」
ガシッと腕を掴まれて必死に問い掛けられた。
カレーを黒焦げって、どうやって作ったらなるのかな?
「あ...作ってる途中で鍋から目を離さなければ大丈夫だと思うよ?」
ほら、焦げる前に気付けるし。
「み、見てたんだよ?出来上がるまでずっと...なのに、出来上がったら真っ黒で」
悲壮な顔で訴えてくるけど、観てたのに焦げたの?
いやいや、それはないから。
見てたら気付こうよ、焦げる前に。
美樹の料理の腕は壊滅的らしい。
「...ま、ほら。料理教室とかあるし。ね?」
お金払って習うなら、なんとかしてくれるんじゃないかな?
「...そうだよね。料理教室あるもんね」
元気を取り戻したらしい美樹は、途端に笑顔になる。
「なんとかなりゃ良いな」
ククク...と意味深に笑う琉希也君はなんともならないと思ってるんだろうね。
正直私もそこは分からなくもない。
壊滅的な美樹の料理をまともにしてくれる料理の先生が現れる事を心から願う。
「ここだ」
琉希也君は立ち止まる。
美樹の料理の話を聞きながら到着したのは、渡り廊下を挟んで特別棟にある一室。
確か、ここは一階の奥の部屋。
今まで途中の保健室までしか来たことが無かったので、ここに来るのは初めてだ。
ドアにはなんの部屋か書かれてない。
「ここが私達の溜まり場」
不思議そうにドアを見てる私に美樹が教えてくれた。
「あ...そうなんだ」
へぇ、溜まり場とか、小説的。
「俺の兄貴が理事長から貰った部屋だ。入るぞ」
気になるワードを言いながらドアを引いた琉希也君。
ここは引き戸だ。
部屋って理事長に貰えるの?
んな訳ないよね。
「おっせぇぞ!」
中から聞こえた声に私の思考は停止する。
部屋の中には既に人が居るらしい。