【完】甘い香りに誘われて4 極道の若頭×ちっちゃな姐さん
「結衣さん。どういたしやした」
「ん…赤ちゃんが生まれるのは楽しみなんだけどすっごい陣痛が痛いっていうからどのぐらい何だろうと思うと怖いなぁって」
植木さんは、あぁ…と言ったあとで
「命を世の中へ送りだすんでごぜぇやすからね。簡単な事ではないでごぜぇやしょうね」
「でしょ。しかも私、ちっさいから普通に産めるかもギリギリらしくて」
「あっしは男だから出産はしたことありやせんけど、それでもこの世の中で一番の痛みは胸の痛みだと思っておりやす。」
「胸の痛み?」
大きく頷いた植木さんは
「あっしら極道でも胸の痛みは感じるんでごぜぇやすよ。」
そして、それはいつまでも残り、決して消えることがない痛みだと仰った。
植木さんが言ってることは、ものすごくよくわかる。
ものすごくよくわかるけど怖いものは怖い。
ガラッと襖が開き
「何、結衣は陣痛の痛みに恐怖感じてるんだって?」
由香里さんが笑った顔で入ってきた。
「こ…怖いですよ」
「それが二度と経験したくない痛みだったら、みんな兄弟がいないよ」
「え?」
「そんな痛みにも変えられないぐらい幸せが待ってる。だからまた出産するの」
由香里さんは怖くなかったのかと聞けば
そりゃ怖かったし、あんな痛みはこの世の中にないと思うと言った。
「だけど、どのぐらい痛かったか産んだ瞬間忘れた」
私のお腹をそっと撫でながら
「痛みがきたら途中でやめるわけにはいかないのよ。あー早く終われ、早く産まれて最初はそう思い、隼の事を殴りたくなるぐらいむかつくだろうね。だけどね、無事に産まれてきて、赤ちゃんも頑張って。いつのまにかそう思うよ」
それはどんなに苦しくても長くても
最後にはそう思うものだと教えてくれた。