優しい世界の愛し方
来栖くんはしばらく黙っていたけれど、やがて何かを決めたかのように、

「よし、分かった!」

そう言ってくれた。

「でも、いつか話してね。そのときは、俺の秘密も話すよ」


約束、と小指をさしだす彼。

私もおずおずと小指をからめる。


ゆびきりなんて、いつ以来だろうか。


なんだか無性に恥ずかしくて、辺りが暗いことがありがたかった。




まあ、約束なんて守る気はさらさらないんですけれどもね。

気を使ってもらっただけで十分。

つらいのは私だけでいい。

私の秘密は気づかれないように、今日の夕闇に隠してしまおう。

ゆびきりをしながら私はそう思った。
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