鬼上司と私のヒミツの関係
部長がパラパラと捲りチェックする。
その間、ずっと落ち着かなくてまたミスしてたらどうしよう、と不安になる。
じっと部長の一挙手一投足を見つめる。
河野響也。
ダークブラウンの髪に切れ長の瞳。
その瞳からの睨みは誰もが震えあがるほど絶対零度。
今日はチャコールグレーのスーツに身を包み、紺色のネクタイを締めている。
整った顔立ちに長身の均衡の取れた身体つき。
モテるけど何せ鬼部長サマなので、ほとんどの女子社員は遠巻きに見てるだけ。
部長に直接お誘いの声をかけるチャレンジャーはあまりいない。
しかも、部長自身が女性を寄せ付けない雰囲気を醸し出してるから余計に、だ。
まぁ、仕事をしに会社に来てる訳だから当然のことだけど。
書類を全てチェックした部長は、ため息をつき目を伏せる。
えっ、もしかしてまた間違えてたの?
ちゃんと確認したから完璧のはず、なんだけどなぁ……。
緊張感で身体が強張る。
これでやり直しって言われたらヘコむどころの騒ぎじゃないよ。
今の私は、なりふり構わず戦ったあとの判定待ちの選手の気分だ。
ようやく部長の口がゆっくりと開き、思わずキュッと下唇を噛んだ。