鬼上司と私のヒミツの関係
「あ、そろそろ戻りますね」
小野くんは腕時計を見てから、ニッと白い歯を見せて笑い給湯室を後にした。
タイミングよく現れてジュースを飲んで去っていった……。
自意識過剰かも知れないけど、もしかして部長に怒られた私を励まそうとしてくれたのかな。
それはそれで、新入社員の小野くんに心配される私もヤバイよね。
もっとしっかりしないといけないなぁ。
自分専用のマグカップにコーヒーを淹れ、ふぅふぅと息を吹きかけ飲もうとしたその時。
「森本、俺にも淹れてくれるか」
……っ!
突然、背後から声を掛けられ身体がビクッと反応した。
誰に声を掛けられたなんて振り向かなくても分かる。
声の主が近付いてくる気配がし、ふわりと香水の匂いが鼻をくすぐり私の心臓の動きが早くなる。
「河野部長……あの、席まで持って行けばいいですか?」
視線を向けると目が合い、胸が弾む。
さっきの小野くんと二人きりの時には感じなかったドキドキが生まれる。
それを誤魔化すように小さく咳払いし、戸棚から部長専用のマグカップを取り出した。
「あぁ、頼む」
「はい」
そう言って部長は背中を向ける。
急いで部長のマグカップにコーヒーを淹れ、自分のマグカップも持ち、後を追うように給湯室を出た。