鬼上司と私のヒミツの関係
「部長、どうぞ」
フロアに戻り、邪魔にならないよう河野部長の机の端にマグカップを置くとパソコンのキーボードを打つ手を止めて私を見上げた。
「サンキュ、森本」
そう言って口許を緩める。
単純な私はそれだけで嬉しくなる。
ふふ、とだらしなくニヤけそうになる顔を引き締めた。
「いえ、失礼します」
頭を下げると、部長は口角を上げ意地悪な表情を浮かべた。
「もうミスはすんなよ」
「分かってます」
私だって一日に何回もミスして注意されたくない。
間髪入れずに返事をすると、部長は「そうか」と言ってマグカップを手に取った。
コーヒーを一口飲み、ホッと一息つくとすぐにキーボードに指を乗せ、ブラインドタッチで素早く文字を入力していく。
残念ながら私にはまだこのスキルはない。
自分の席に座り、ぬるくなったコーヒーを飲みながらパソコン越しに部長を見る。
スーツの上着を脱ぎ、真剣な表情で仕事をしている姿は見惚れてしまう。
少しの変化も見逃さず、いつまでも見ていたいけど自分の仕事を疎かにする訳にもいかない。
それでなくても今日はミスをしてしまってるんだから。
視線を戻そうとした時、一人の女性が部長の席に近寄ってきた。