ココロトタマシイ
「えっと…503号室は……っと」


あったあった。

ちゃんとネームプレートを確認してから、扉をノックする。


「どうぞ」


すると、すぐに返事が返ってきた。

ドアを開けると、肩に上着をかけて枕を立てて、それにもたれながら本を読んでいる南くん。

窓から注ぐ太陽の光に、彼の淡い色の髪がキラキラと反射して。

さらに少し開いた窓から入る風にさらさらの髪が揺れる。

それが何だかとても綺麗で。


「かっこいい……」


思わず率直な感想が口から漏れた。

その声に反応したのか、彼はこちらを向いて私の顔を見るなり眉をひそめた。


「またあんたか…。
何の用?」


「そんな、あからさまに嫌そうな顔しなくても…。
お見舞いに来たの」


彼は本から目を離さないまま、ふぅんと興味なさげに答えると。

唐突に声をかけてきた。


「そこの窓、閉めてくれない?」


「え、うん」


私は備え付けの椅子に鞄を置くと、少し開いた窓を閉めた。


「これでいい?」


「どうも」


「寒かったの?」


「少しね」


そう言われれば確かに、今日は6月のわりには気温が低い。

風も少し冷たいし、全く動いてない彼にとっては寒いかもしれない。

私はそっと椅子に腰掛けると、先程急いで買ってきたお見舞いの品を取り出す。


「はい、これ」


「…何それ」


「え?りんご」

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