calling
「取ってあげようか?」

別々で行動していた私を
俊輔さんが見つけて
声をかけてくれた。

おそらく見上げていた
高い場所にある文庫を
取ってくれようとしていた。

「大丈夫です。全部持ってるから。」

私が静かにニコッと笑うと
俊輔さんは私の目線をたどって
「い」から始まる作家サンの本を
一緒に観てくれた。

なんだかこんな何気ない時間が
とても優しく感じた。

本棚が並べてある本屋サンの中で
私を探してくれたこと。
私と同じ本を観てくれたこと。

こんな何気ないことが
くすぐったくなる…。

「…出ようか。」

優しく話してくれる俊輔さんと
一緒に本屋サンを出た。

外はもう真っ暗だった。

お昼間と違って風も冷たい。
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