calling
009
真っ暗のなか冷たい風が
優しく体内に…入ってく。

ふと隣には俊輔さんが居て
思わず微笑んで見とれてしまう。

俊輔さんのココロのなかには
私じゃないひとが入ってるけど
それでも…今…隣には
俊輔さんの隣には私が居る。

なんだか懐かしい。

好きな男性の横に居るだけで
こんなにもドキドキして穏やかで
温かい気持ちになれるんだっけ。

そっと
俊輔さんの着ているスーツの裾を
右手で握った。

それに気づいて俊輔さんが
振り返って…私を静かに観た。

歩いていた足を止めて

スーツの裾を握っている私の手を
もう片方の手で離されて…

私の右手が
俊輔さんの左手に繋がれた。

あったかい…手だった。

私は…離したくないと思った。
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