僕らのはなし。①
試合後、私は先輩の馬房を訪れた。
「よしよし。」
優しく撫でてあげたり、餌をあげたりして試合後の体を労ってあげていた。
「お疲れ様!」
「俺は疲れてないよ。
ナイトが頑張ってくれたから。」
「ナイトって言うの?」
「うん。」
「こんにちは、ナイト。
今日は頑張ってくれてありがとう。」
そう言って挨拶して撫でてあげた。
ちょっと馬には初めて触るので緊張もあったけど、ナイトは大人しく撫でさせてくれた。
どこか気持ち良さそうでこっちまで和む。
「ん?そう??
乗って良いって。」
「ホントに?」
私は手を貸してもらいながら、恐る恐るナイトに乗った。
紐は先輩が持ってくれて、ゆっくりと散歩した。
ナイトは穏やかな子で、何か勝敗を気にしていた自分が申し訳なくなるほどだった。
ホントにありがとう。
ナイト。
2日後…今度は先輩の引いたくじの種目の発表の為にまた皆で集まった。
「今日は時雨のね。
種目は…カーレース。」
それを聞いて、先輩の表情が固まったのが隣から見えた。
「どうするの?」
あの後、少し気になったので、先輩が帰ってから四宮さん達に事情を聞いてみた。
両親の事故以来、先輩は事故の記憶を思い出してしまうから車が苦手らしい。
確かに皆車の送り迎えに対して、先輩は一人でバイクだもんね。
それで翌日…バイトに来て、早速柚瑠に事情を話すと、そう聞かれた。
「うん。
止めるべきなんだよね。」
「でも、今度負けたら、湊は退学になっちゃうんだよ?」
「私は、退学になったって良いよ。
先輩が苦しむ方が嫌。」
「でも、先輩棄権しないんじゃない?」
「うん…だよね。
どうしよう。」
私達はそこで詰まって溜め息をついた。
「湊ちゃん。
これ、持っていきな。」
後ろから、手が延びてきて、目の前にはお弁当箱が。
「マスター。」
「とめられないなら、せめて応援してあげなよ。」
勿論、お弁当箱を置いてくれたのはマスターで、私達が振り向くと優しく微笑んでそう言ってくれた。
「ありがとうございます。」
「行ってらっしゃい。」
「気を付けてね。」
2人に優しく見送られ、私は応援に向かった。