僕らのはなし。①


そして、レース当日…またもやどこで情報を得たのか生徒達が集まる中、私は柚瑠と先輩の控え室の前にいた。


「あの…。」
ドアが開いて四宮さんと出てきた先輩に、柚瑠が声をかけた。

「今日これで負けたら、2人は…。
秘策とかは何かありますか?
ありますよね…?」
柚瑠が懇願するように先輩に聞いていると、隣の控え室から伊崎と神崎さんが出てきた。

自然と一瞬私達の視線がそちらに向く。


「うん。
あるよ。」
そう言って、先輩は私に近づいてくると抱き締めた。

「先輩?」
「少しだけジッとしてて。
卑怯な手だけど、勝つためなんだ。」
小さな、私だけにしか聞こえないくらいの声でそう言うと、私のおでこに軽くキスをした。

内心驚いて、頭が真っ白になり固まる私。


「じゃあ行ってくるね。」
そう言うと、先輩は行ってしまった。

そして、私達は晶さんや皆が居るとこに戻った。



ドンッ
スターターピストルの音と同時に発進した2台の黒と白の車。

黒の車…伊崎の車が先を走っている。

私は猛スピードで走る2台の車を、怖くて目を閉じてしまいたい気持ちと戦いながら見つめ続けた。

レース場を3周した方の勝ち。
先輩も必死に食いつこうとしてるんだけど、なかなか追いつけない。

「あっ!」
誰もがこのまま伊崎優勢で終わるのかと思ったけど、伊崎の車はコーナーをまた曲がりきれず、レーンから外れてしまった。


伊崎の事が気になりながらも何とかまだ走っている先輩の車に集中する。

心配しながら見ていると、先輩はスムーズにゴールを決めた。


「湊ー!!」
「柚瑠ー!!」
安堵と嬉しさで手を取り合って喜んだ。


その日は先輩の勝利が決定し、1勝1敗で最後の競技に全てが託された。





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