僕らのはなし。①
「靴は…これで良いかな。」
聖奈さんが持ってきてくれたのはヒールの高いシルバーのキラキラしたミュールだった。
「凄い素敵…。
いや、でも私には合わないんじゃ…。」
「私の好きな言葉にね、靴は一番良い物を履きなさい。
そしたら、自然と素敵なところに連れてってくれるから。ってのがあるの。
それに貴女にとてもよく似合ってるわよ。」
聖奈さんはミュールを履かせてくれながら、優しく微笑んでそう言ってくれた。
靴が本当に私に似合ってるかは分かんないけど、聖奈さんがそう言ってくれたってだけでもう何か感激だし、良いんじゃないかって気になった。
緊張と慣れない高いヒールでの歩行に少し変な歩き方になりつつ、聖奈さんについて会場に戻った。
会場の扉が開くと、皆の視線が一気に集まってるような感じがして、恥ずかしさで下を向いてしまう。
そんな私を聖奈さんが両肩に軽く手を置いて、優しく前に押してくれた。
そこでやっと会場内に足を踏み入れる事が出来た。
皆ザワザワしてるし、何処からか何かを落とす音も聞こえたけど、今はどうしたら良いのか分からない。
「ほらっ、女の子を放っておくのは紳士じゃないわよ。」
いつの間にか、移動していた聖奈さんの声が聞こえ、そっちを見ると結城先輩の背をこっちに向かって軽く押していたところだった。
先輩はゆっくりと私の前に歩いてくると、スッと綺麗な手を差し出した。
「えっ」
「手。」
そう言われたので、とりあえず手を重ねると、手を引っ張って身体を寄せられた。
ちょっと吃驚して頭が混乱してる中、反対の手を腰に添えて、始まった音楽に軽く揺られるような感じに。
私にダンスが出来ないのが分かってるからか、無理な動きはせずに居てくれて、抱き締められてる感覚にドキドキする。
でも、全然嫌じゃない。
今だけは、何か2人だけって感じで夢のようにフワフワした感覚だった。
ぎこちなくもなんとか先輩に合わせ、1曲踊った。
その後、聖奈さんにバトンタッチ。
流れるように優雅に踊る2人はとてもお似合いで、やっぱり私には勝てないなって思ったけど、別に悔しくは感じなかった。
今まで感じた事ない寂しさに近い気持ちはあったけど。