僕らのはなし。①
ー時雨sideー
さっきの話を聞いて、俺は頭が真っ白になった。
聖奈がパリに戻る?
もうここへは戻らない??
今まで何の保証もなかったけど、心の何処かで何処に行ってもいつかは俺の隣に戻ってきてくれると思ってた。
だから、今まで離れるのが辛くても、送り出してきた。
なのにもう戻らない…。
話し終わった聖奈の腕を引っつかんで、会場から連れ出した。
ここで子供みたいに怒鳴り散らしたりしないように、気持ちを抑えながら無表情にして。
人気のない部屋に入ると、腕を放した。
「時雨??」
「聞いてないんだけど。
何でそんな事を??」
「先に言わなかったのはごめん。
でも、さっきも言った通り私は今までたくさん親のお蔭で何の苦労もなく得てきたの。
留学してそれがよく分かった。
私はこれからは葉月商事の娘とか跡継ぎとかじゃなくて、私個人としていろんな人達と向き合っていきたいの。」
聖奈は、冷静に俺に言い聞かせるようにそう言った。
「俺は何だったんだ??」
「時雨…凄く怒ってるよね。」
分かるような分かりたくない話に言葉が溢れ落ちた。
俺の顔を下から無意識の上目遣いで見上げながらそう聞く聖奈から、顔ごとそらす。
「捨てられた気分だ。」
「私にとって捨てられないものがあるとしたら…それは時雨、あなたよ。」
「嘘つくなよ。」
「嘘じゃないわ。
貴方の視線が気になったもの。」
「どういう事だ?」
「貴方があの子を助けた時も、何故か動揺してしまったの。
変でしょ?」
「冗談はよせ。」
「でもね、同時に男になった貴方が嬉しくもあったの。」
「笑わせるな。」
置いていく気の癖にそう言われても全然嬉しくもなく、腹が立ちそう言った。
「…勝手にしろよ。
適当な距離だけ保っておいて…玩具と同じか。」
「貴方を失ったら、泣き通すわ。」
その言葉に今までの思いが溢れ出す。
「俺の視線?
ずっと俺は聖奈だけを見てきた。
俺だって男だ。
お前を抱きたいって思うただの男だ。」
聖奈の両肩を掴みながら、怒鳴るようにそう伝えると真っ直ぐ俺を見て話を聞いてた聖奈が俺の首に腕を回し抱き締められた。
「うん…分かってる。
ごめんね。
本当にごめん。」
ここまで言っても、やめようとはしない聖奈。
俺は1つ息を吐くと、一度離れて聖奈を抱き締めキスをした。