僕らのはなし。①
ー湊sideー
私は若干開いていた部屋の扉の隙間から2人がキスしてるのを見た。
どうしようもない状況に静かに扉を閉め、足音を立てないように歩き出すけど、今の事を忘れられたら…なんてショックから頭を壁に打ち付ける。
軽くやったけど、壁が丈夫だからやっぱり痛くて押さえる。
「そんなとこで今気を失ったら、とんだ赤っ恥だぞ。」
不意に声が聞こえ、そっちを見ると…伊崎が呆れたように私を見ていた。
「お前はそんなか弱いキャラじゃないしな。」
「言われなくても分かってるわよ。」
そんな事言われなくても分かってるので小声で言い返すと、もうここから離れようと歩き出した。
でも、伊崎の隣辺りに来た時に後ろから扉が開く音が聞こえ、咄嗟に向き直り今来たのを装う。
2人は腕を組んで出てきた。
「あれ?湊ちゃん??
そこにいたなら入ってくれば良いのに。」
「あっと…。
お礼が言いたくて、今来たところで…。」
聖奈さんの言葉に、焦りながらも何とか言葉を絞り出し、そう伝えた。
隣から鼻で笑ったようなのが聞こえたが、今は気にしない。
「会場はまだ騒がしいでしょ?
ドライブに行くんだけど一緒にどう?」
「えっ、えっと…私は大丈夫です。」
「俺達は俺達だけで行くよ。」
「えっ、2人で?」
「うん。
ちょうど2人で外に出ようかって話してたんだ。」
不思議そうな2人に、全然嘘なのにそうは思えない感じで伊崎は平然とそう答えた。
「…えぇ、そうなんです!!
じゃあ失礼します。」
「じゃあな。」
そう言うと、伊崎は肩に腕を回して歩き出した。
それに納得出来ないけど、此処で嫌がる素振りを見せて、2人にバレる方が恥をかくので、合わせて進んだ。
「貸し1だな。」
「はぁ?」
角を曲がって、2人から見えなくなってから、肩に腕を回してるから顔が自然と近い場所にある伊崎が小さな声でそう言った。
私も若干抑えながらもそう返す。
「だから、貸し1だ。」
「こんな事で?」
「俺の貸しってのは高いんだ。
嫌なら戻るか?」
「分かった、分かったから。
アンタの言う事、1つは聞く。」
本当に踵を返し、戻ろうとする伊崎の腕を掴んで慌ててそう言った。
「1つ?…2つだ。
言っただろ、高いって。」
「分かったわよ。」
そう言うと、満足そうに笑い別方向に歩き出したので私も続いた。