僕らのはなし。①
それからも、授業中にゴミとかを投げられたりした。
体育の時間は手に怪我をすると困るから私はいつも欠席してるので、今日もその時間はレッスン室に行った。
うちの学園は音楽の授業はなく、特別に専攻している生徒に使用が許されているレッスン室が特別棟に各分野それぞれある。
ここはお金持ちの一般生徒達もそう簡単に入れない。
入るのを許可されているのは、各分野の特別講師とその生徒だけ。
私の講師は、有名ピアニストの雨宮 実里ーアマミヤ ミノリーさんで、多忙ながらもこの学園のOGという事もあって特別に講師もしていただいてるが、自分のツアーもあるのでなかなか彼女のレッスンは受けられず、自主練習な事がほとんど。
それでも私の音を認めてくれて、講師になってくれた時はほんとうに嬉しかった。
今までの先生は、型にハマった弾き方をさせる人達ばかりで、自由に弾く事は許されず、かえって自分らしさがない完璧過ぎて面白味のない、ピアノ演奏になってしまっていたから。
だからその点では、凄く自分らしい演奏が出来るようになった。
学園側からのプレッシャーは大きいけど、何とか結果を残せてるのはそれが助かってるから。
特別なセキュリティを通過して私がいつも使ってるレッスン室に入ると、何故かまた結城先輩が隅の方で壁に寄りかかり寝ていた。
「あの…先輩??」
軽く揺すったり、手を顔の前で振っても起きない。
「どうしよう。」
そう言いながらもついつい綺麗な寝顔に吸い寄せられる。
「綺麗な顔…。
…って、何言ってんだろ。
ダメダメ。」
「何が??」
私が近くで煩すぎたのか、その声と共に先輩の目がゆっくり開かれたので慌てて離れた。
「人の顔の前で煩いんだけど。
何がダメなの??」
「えっ、いや。
別に…。
てか、いつから起きて?」
「静かな場所を求めて此処に来たのに、何か騒がしいから。」
急に先輩が起きたのは吃驚したけど、大して聞かれてなかったみたいで正直ホッとした。
「すいません。」
「何かやたら、今日は君と会ってる気がする。」
そう言いながら、先輩はダルそうに立ち上がって、出入り口の方へ。
「てか、何で君は此処に??」
「私はピアノ専攻で、普段からこのレッスン室を使わせてもらってるんです。」
「ふーん。」
特に私の答えに興味も無さげに頷くと出ていった。
先輩が居たところには雑誌が開いて置いてあって、そのページには葉月 聖奈ーハヅキ セイナーさんが載っていた。
この学園のOGでもある彼女は、現在モデルで留学中だけど、この学園とエスカレーターでいける桜ノ宮大学の法学部の学生。
そして、私の憧れでもある。
自分の家が大商社なのに、その環境に甘える事なくモデルの仕事をして、給料は寄付し、国際弁護士目指して勉強している芯の強い生き方に憧れた。
「先輩もファンなのかな??」
そんな事を呟きながら、雑誌を閉じて机の上に置くと、ピアノのレッスンを始めた。