詐欺師の恋
―14年前。
「最近さ、やたら目に付く金髪が居るんだよね。」
そんなことを燈真が言い出したのは、8月半ば頃。
残暑厳しい外の世界と打って変わって、ルナは涼しかった。
いつも通り開店前に行けば、当然人の入りは無いに等しいし、勿論熱気もない。
ひと仕事終えて、報告を兼ねてカウンターに座れば、ボンベイサファイアの瓶が目の前にドンと置かれる。
「マジ?俺より目立つ?つか、ロックがいいんだけど。」
「は?最終的にはいつも瓶からそのまま飲んでんだろ。経費削減。」
「えぇ!?暑い中仕事してきたんだからよぉ、氷が欲しいぜぇ。」
信じらんねぇ、と叫ぶと、燈真が呆れた顔をしながら、不服そうに氷の入ったグラスをカウンターに叩き付けた。
「これで満足か。で、話聞いてる?」
「サンキューサンキュー!聞いてる聞いてる!」
思わず零れる笑みを隠す事無くグラスに飛びつく俺を見て、燈真は軽く頭を抱え、溜め息を吐いた。