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「夕べはそれがショックすぎて眠れなくて… でも良かったぁ」

「まぁ、実際恒兄が父親だったら… って俺も何度か思ったけどね」

パパはいなくなって十年以上経つ今でも、こんなに慕われているなんて娘として誇らしい。

…のだけれど、その一方で

「甲ちゃんと貴はズルイよ!あたしなんてパパとの記憶ほとんどないんだもの」

「…何か、ごめん」

別に責めるつもりで言ったわけじゃないのに、空気が重たくなった感じがする。

「…パパの話、もっと聞かせて?パパと何話したとか、どこに行ったとか。

それから… 何でパパがいなくなったのかとか」

「…っ!! …そうだね。娘の絹には知る権利はある。

だけど今夜はゆっくり休みな。疲れただろ?」

「朝みたいにならない…?」

「大丈夫、何かあってもここにいるから」

あたしは甲ちゃんの手の温かさを感じながら、眠りについた。





しかし彼が一瞬顔をしかめたのをあたしは見逃さなかった。

そして、それが彼の人生に大きく影響していたことも この時はまだ知る由もなかった…
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