学園ジュリエット


「しっかりとお礼をしたいところですが,今から塾なんで・・・」

「わかった.じゃあな」


真田さんは,うなずくと来た道を引き返し始めた.

私も塾に間に合わなくなるので歩き出した途端,再び呼び止められた.


「なあ,名前を教えてくれないか」

「え?」


「あ,いや,先に名乗るのが礼儀だな.俺は真田景だ」


有名人なんだから知っている,と言いたいところだが初めて聞いたというような顔をして自分も名乗る.


「私は間川結子です.またご縁があればよろしくおねがいします」

「ゆいこだな,覚えた」

「・・・」


いきなり名前で呼ぶ距離感の近さに戸惑うが,それが彼の人気を示しているのかもしれない.

今度こそ会釈をして,私は真田さんと別れた.


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