社内恋愛なんて
本当に好きだったら・・・
次の日、会社に行くと部長はすでにデスクに座っていて仕事をしていた。


少しだけ、気まずい。


こういうことは引きずらず、先手必勝のごとく対処するのが一番だ。


私は大きく深呼吸をして、まっすぐに部長の元へ向かった。


「おはようございます」


　声を掛けると、部長は驚いたように隣に立っている私を見上げた。


「おお、おはよう」


「昨日はありがとうございました」


　軽くお辞儀をする。


部長に送ってもらったことは皆知っているので、私がお礼をしても誰も不思議がらない。


「昨日はゆっくり眠れたか？」


「え、あ、はい……」


　本当はあまり眠れなかった。


色々考えすぎてしまって。


でも、本当のことを言ったら部長に心配をかけると思って言わなかった。


すると部長は、柔らかく微笑んだ。


「良かった」


　部長の言葉数は少ない。


けれど、一言一言に重みがあって優しさが含まれているのを感じる。


じーんと胸に温かいものが込み上げてきて、私は勢いよくお辞儀をしてその場を去った。
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