社内恋愛なんて
色々と準備をしていると、部長がまた顔を出しに来た。


「剛田部長! また来てくださったんですね!」


 瀬戸内さんが弾む声を上げた。


好きというのが身体全体から溢れ出ていて、複雑な気持ちになった。


「ああ、何か手伝うことはないか?」


 瀬戸内さんは部長の元に駆け寄り、満面の笑顔を向けた。


「いいえそれより、私を飲みに連れていってくれた方が助かります」


「なんだそれは」


 部長は呆れた顔で言葉を返した。


私は二人の会話に耳を集中させすぎて、つい注意が怠って紙で指を切ってしまった。


「つっ……」


 顔を歪めてひとさし指を見ると、少し血が出ていた。


ああ、もう馬鹿だなあ。


なにやってんの、私。


 指を切ったことを皆に気付かれないように小さくため息を吐くと、部長が血相を変えて飛んできた。


「湯浅、大丈夫か!?」


「え!?」


 部長の慌てぶりに、私が一番驚いた。


慌てて切った指を背中に隠す。
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