社内恋愛なんて
バッグに色々なものを詰め込んで、最後に全身鏡でチェックする。


今日のために新調したワンピース。


当日寒かったらどうしようと思ったけれど、今日はよく晴れている。


暖かな日差し。


ようやく春がやってきたようだ。


 着信音がして慌ててスマホをスライドさせると、部長からLINEがきていた。


【着いたよ】


 部長にしては珍しく、車のスタンプ付きだ。


スタンプなんて普通のことなのに、なんだかふふふっと笑いが込み上げてくる。


私に合わせようと部長なりに頑張ってくれているのが見えて、嬉しくて胸の奥がむず痒い。


 トレンチコートを羽織り、急いでマンションのエントランスに出ると、部長の車が停まっていた。


なんだかドキドキしてきた。


緊張と恥ずかしさで顔が強張ってしまう。


 近付いていくと、運転席に座っている部長と目が合った。


身体が一気に熱くなって、頬が赤くなる。


慌ててお辞儀をして、赤くなった頬を隠すように俯きながら助手席を開けた。
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