社内恋愛なんて
 8人掛けのテーブルが3つ用意してあって、店の一角を貸し切っていた。


他の客との間にはパーテンションで仕切ってあるので、あまり気にならない。


めいめいがテーブルに座り、近くの席になった人と談笑していた。


 店を見渡すけれども守の姿は見えなかった。


楽しみにしてるって言ってたのにな、と思いつつも、いなくて少し安心している自分もいた。


「守っちまだ来てないね」


 女の子数人が残念そうに肩を落とした。


大体みんな、名字で呼ばれているにも関わらず、守は下の名前で呼ばれることが多い。


特に女の子からは親しみを込めてあだ名で呼ばれている。


誰とでも仲がいいし、人気者だということがうかがえる。


 だから私が守と呼んで、守がみあと私のことを呼んでも誰も不思議には思わない。


それは有難いことでもあるけれど、少しだけ寂しくもある。


どうして寂しく感じるのか自分でもよく分からない。


もう特別じゃないのに。


恋心なんてとっくに捨てたのに。
< 27 / 359 >

この作品をシェア

pagetop