社内恋愛なんて
「吉川君が、守のことを心配しているってことは十分分かった。でも、私の気持ちは変わらないから」


 私は吉川君の顔を見ずに、踵を返して化粧室へと向かった。


女子トイレの中に入り、壁にもたれかかりながら、ずるずると下がってしゃがみ込んだ。


 三年前の感情が溢れ出してくる。


お願いだから、もうその話題には触れないで。


もう思い出したくない。


こんな感情も、思い出も、何もかも。


私だって必死に生きてきたんだから。


世界が一瞬にして絶望に変わったあの日から、這いつくばってここまで来たんだから。


 涙が溢れて止まらなかった。


私はいつになったら呪縛から解き放たれるのだろう。


守と一緒の仕事でいる限り、やっぱり終わらないのだろうか。


 何度も何度も何度も考えて、いつも寸でのところで思いとどまっていたことを、また再び考える。


 ……仕事、やめようかな。


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