社内恋愛なんて
「きゃっ」


 尻餅をついて倒れそうになったところを、寸でのところで腕と腰を支えられた。


「大丈夫か!?」


 部長は緊迫感のある声で言った。


「あ、はい、すみません」


 本気で心配してくれているのが伝わってくるので、なんとか平気なふりをしたいのだけれど、気持ちとは裏腹に身体の力が抜けていく。


立ち上がりたくても立ち上がれず、そのまま座り込んでしまった。


「具合が悪いのか?」


 部長も膝をついて私の目線に合わせてくれる。


部長の顔を見ると、無性に抱きつくたくなった。


抱きついてその胸の中で大声を出して泣きたい。


とても沈んでいた時に好きな人が目の前に現れて、お酒でよろよろになってただでさえ心細い時だから、そんな気持ちになるのだ。


でも、この衝動的な気持ちは封印しなくちゃいけない。


理性を保つんだ。
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