社内恋愛なんて
もう一度、ゆっくりと後ろを振り返る。


するとそこには、毎日きちっとスタイリングされている髪が乱れ、前髪が額にかかり、いつもより幼く見える部長の端正な寝顔があった。


 やっぱり!


 再び私は身体の向きを変え、視線を自分の部屋へと戻す。


今度は違う意味の冷や汗が流れ出てきた。


知らない男の人と一夜を過ごしてしまったというわけではなかったけれど、部長と一夜を過ごしてしまったというのも、とんでもない失態だと思う。


知らない男の人と一夜を共に過ごすことより、部長と過ごしたという方が何倍もいいけれど、なかったことになんて絶対できない。


会社で顔を合わせる度に思い出してしまう。


なんてことをしてしまったんだろう、私は。


しかもまったく覚えてない。


 やっちゃったんだろうか、部長と。


キスだけではなく、最後まで。


震える手で、布団の中をめくって服を確認する。


ブラウスと、下着のみ。


ブラジャーとパンツは履いているけど、ストッキングは履いていない。


 ああ、終わった。


私は項垂れて布団に顔を突っ伏した。

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