奥様のお仕事
「マリン マリン」


「ん・・・・・・・」


「起きて」


「ん?」


「出かけるよ」


寝ぼけ眼の私は 浩一郎に起こされて よくわからないまま
洋服を着せられて 

佐伯さんのお迎えの車に乗った。


「どこへ?」


「空港」


「空港って?」


「新婚旅行だよ」


「え?待って 聞いてないよ」


「言ってないし~」
浩一郎が笑った。


「楽しんできてくださいね」
佐伯さん


「美由紀さん 生まれたら教えてよ」
美由紀さんは臨月に入っていた。


空港で 佐伯さんに別れを告げて わからないまま
スーツケースを引っ張りながら 
浩一郎の後をついて行く。


「どこへ行くの?」


「島 マリンの島」


「マリン 飛行機怖がるから 言わなかった」


恐怖感の 飛行機に乗って 
あの日別れをつげた美しい海が見えてきた。


「ただいま~~~あ~~すごい すごい~~~」
怖かった飛行機も海が見えたら 怖くなくなる。


空港についたらすぐにまた移動


船に乗って 島へ向かう。
海を見ながら あの日わけもわからず 浩一郎に
ついて出てきた日を思い出した。


「ただいま 約束通り 大好きな人と帰ってきたよ」

真っ青な海に 向かって大きな声で叫んだ。
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