奥様のお仕事
懐かしい風景だった。
あの日と何も変わっていない 海も空も佇まいも全て・・・・

「うちまだあるのかな もうないだろうな~」

浩一郎の手を引いて歩く 懐かしい道


「あれ あれ あれ 家ある ある ある~」


走り出す坂道 息が切れたけど
なつかしいあの家が見えてきた。


ペンキが塗りかえられて すっかりきれいになっていた。


「誰か住んでるのかな キレイになってるよ」


家の周りをくるくる回ってみる。


「庭とか手入れしてあるよ どんな人住んでるんだ」


なつかしい じいちゃんとの思い出の家が
外見は少し変わってしまったけど まだ残っているのが嬉しい。


「表札出てるよ」
浩一郎に 言われて 玄関前の ポストに書かれた ローマ字を読む



HASE・・・・・ん? え?


「長谷?」

浩一郎を振り返ると 笑顔でうなづいた。


「え?ホント?」


「うちの別荘だよ」


嬉しくなって 浩一郎に抱きついた。


「マジで? どうしよう ありがとう 」


「いいだろ こっちへ来たときは 泊まれるし
長く滞在もできるし」



浩一郎は私の手のひらに 可愛いキーホルダーのついた
鍵を乗せて

「どうぞ ご覧ください」と微笑んだ。
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