この気持ちをあなたに伝えたい
 横目で最愛が礼雅を見ると、口を尖らせている。映画を観ていると、主人公が友達にこんな質問をされていた。
 自分にとって得になるなら、どんなことでもする。それは良いことか悪いこと、どちらだと思うか。

「どっちだ?」
「そんなこと言うまでもないだろう?」

 再度、同じ質問をするので、最愛はそれに答えを出した。答えは悪いこと。それを良いことだと思っていたら、人はどんなことでもするに違いない。

「だけど、人は自分のことしか考えることはできない。だからーー」
 
 平気で人を傷つける。罪の意識を感じる人もいれば、感じない人もいて、自分を正当化する。

「決して他人事ではないな。私だって・・・・・・」

 それ以上言葉を続けず、映画に視線を戻した。礼雅もそれ以上何も言ってこなかった。
 会話をせず、ずっと映画を観ていた。中には残酷なシーンもあって、最愛は慌てて目を閉じていた。

「うわっ!」
「そんなに驚くなよ・・・・・・」

 礼雅は苦笑いしていて、最愛はカステラが乗っている皿を礼雅へ押しやる。

「カステラ、もう一切れ食べるか?」
「もういい、残り一切れはお前が食べろ」

 最愛はカステラをフォークで切り、口の中へ入れた。

「映画、どうだった? 最愛」
「残酷なシーンもあったけれど、なかなか面白かったな」
「続編もあるみたいだ」
 
 続編の映画も観てみたいので、最愛はチェックすることに決めた。
 映画が終わった後に外の雨音に気づいた。もうとっくに家に帰っているに違いないが、もしかしたら美鈴が帰っているときに少しは雨が降っていたのかもしれない。

「こっちに帰ってくるとき、雨は降っていたか?」
「少しだけ。すぐに止んだな。明日も降らなければいいんだけどな・・・・・・」
 
< 105 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop