この気持ちをあなたに伝えたい
 授業を終えてから角重先生は問題集をクラス全員分集めて持ってくるように係である最愛に指示を出した。
 係はもう一人いるが、この日は風邪で休んでいたので、二人で話すチャンスを掴んだ。
 廊下を二人で歩いていき、職員室の前で足を止めた。両手で問題集を持っているので、ドアノブを回すことができない。
 しばらく困っている彼女を見て薄ら笑いを浮かべてからドアを開けた。机に問題集を置いてすぐに職員室を出て行こうとしたから止めた。

「もう少し・・・・・・私に時間をくれない?」
「時間? 何かお仕事ですか?」

 他にも仕事を頼まれると勘違いをしているらしく、いつものように笑って首を横に振った。

「話があるのよ。ちょっと来て」
「はい」

 こんなところを古霜先生に見られたらまずかった。人気が少ない場所でないと、話をすることなんてできない。焦って早歩きになっている角重先生の後姿に最愛はただついて行くしかなかった。
 連れてきた場所は屋上。普段は立ち入り禁止の場所となっているから誰もいないことは承知の上。自分の気持ちと違って、空はとても綺麗な青空だった。それを見て、余計に苛立ちが強くなった。
 彼女は自分の腹を何度か見ているので、空腹だとすぐにわかった。早く教室へ帰す気などない。最初に何気ない会話から始めることにした。

「今日はいい天気ね」
「そうですね」

 晴れた日が好きなことを言うと、角重先生はまだ本題に入ろうとせず、休日の話に入る。

「休みの日は何をしているの? どこかへ出かけたりしている?」
「休みは家で本を読んだり、パソコンをしたりします」
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