この気持ちをあなたに伝えたい
「古霜先生の下の名前は知っているよね?」
「知っています・・・・・・」

 じわじわと最愛を追いつめるように、わざと彼の名前を口にする。
 ここから古霜先生について、耳を塞ぎたくなる話にすることにした。もちろん、最愛はこれから何の話をしていくのか知らない。

「圭と私を見てどうかな? 恋人としておかしくない? 似合っていると思う?」

 おかしなことばかり質問してくる彼女を見て、最愛の顔が徐々に歪む。

「何なのですか? どうしてそんな・・・・・・」
「質問に答えて」

 相談ではない。最初からする気なんてない。
 角重先生の笑顔はもうすでになくなっていて、誰が見ても、恐怖を感じるものだった。

「そんなの・・・・・・わかりません」
「圭はね、昔から女の子達に好かれていて、よく女の子達が彼を囲むの。知っているでしょ?」
「知っています」

 実際に目にしたことだって何度もあるようだ。徐々に目を逸らしていく最愛に話し続ける。

「見た目だけじゃなくて性格だって優しいじゃない?」
「はぁ・・・・・・」
「でもそれは相手が生徒、子どもだからなのよ?」

 どう見ても自分は最愛みたいな子どもなんかじゃない。最愛よりずっと彼のことも他のことも知っている。手出しをするのだったら、黙っていられない。
 その言葉に最愛はショックを受けたようで、顔色はだんだん悪くなっていった。

「本当に自分でも驚いちゃった。こんなに嫉妬する女だったなんて」
「角重先生・・・・・・」
「私と圭の関係を切ることなんて不可能なの」
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