この気持ちをあなたに伝えたい
 いくら何でも買い過ぎ。
 深香は堂々としているが、一万以上は飛んで行っている計算になる。

「まさか・・・・・・服以外のものも買ったのか?」
「うん。化粧品とアクセサリーを・・・・・・」

 そんなにたくさん買い込んで、金がいくらあっても足りない気がしてならなかった。

「どれも安くなっていたんだよ!」
「それだけ買ったら、いざ金がいるときに困るだろう・・・・・・」

 そういうことも考えるよう、深香に伝えた。

「気をつけるわよ」
「当然だ」

 マイクを置いて、レジで支払いを済ませて外へ出ると、真っ暗な上に人がたくさん歩いていた。それを見てうんざりしながら信号を渡った。電車から降りて深香と別れ、暗い道を一人で歩いた。歩き進んでいくと、背後で物音がした。
 足元に転がってきたのは空になっている空き缶だった。風に乗って転がってきたのかと思い、それを道路の横へ蹴飛ばした。
 寒さに背筋を震わせながら、温かいご飯が待っていることを期待してマンションへ急いだ。路地裏には極力通らないようにしている。季節は関係なく、不良や頭がおかしな人に出会い、怖い目に遭ってからでは遅いからと何度か親に言われたことがある。
 だけどいつもの通りを歩きたいが、制服をだらしなく着ている男子生徒達がタバコを吸いながら下品な声で笑っている。
 ここはあまり危険な場所ではないのに、今日に限って嫌なことがいくつも起きることでげんなりとした。仕方なく、路地裏を歩くことにして周囲を警戒した。すると、前方で男性の話し声を耳にした。
 立ち止まっても家に帰ることができないので、早足で通り過ぎようとしてもう一度男性を見ると、最愛の知っている人物だったので、目を丸くした。
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