この気持ちをあなたに伝えたい
 礼雅は溜息を吐いていると、最愛が眉間に皺を寄せた。

「その溜息は何だ?」
「あまりにも馬鹿だから」
「なっ!」

 最愛は怒って、礼雅に掴みかかって睨みつける。

「何だと!」
「こんな言い方だと伝わらないか」

 礼雅は質問を最愛にぶつけることにする。

「俺が興味のない女と同じ時間を過ごすと思うか?」
「いや、思わないな」

 最愛が首を横に振ると、礼雅は次の質問を投げてきた。

「あのストーカーに狙われていることを知ったときに俺はその女からできるだけ離れないように行動したり、家に入れることはしない」
「それはつまり・・・・・・」

 最愛は声を振るわせながら、思っていることをそのまま言葉にした。

「私のことが好きなのか?」
「お前・・・・・・」

 礼雅の目つきが鋭くなり、さらに最愛に近づいた。最愛はその威圧感に思わず後ろへと下がる。

「どこまで鈍いんだ?」
「私は鈍くなんかない!」

 最愛が言い返すと、礼雅は鼻で笑った。
 
「はっ! 笑わせるな!」
「鈍くない!」

 最愛が言い返すと、礼雅は最愛の鼻を親指と人差し指で強くつまむ。

「おい! やめろ!」
「ふん・・・・・・」

 鼻を塞がれているせいで変な声が出る。それがおかしかったのか、礼雅はすぐにつまむことをやめた。

「鈍感娘なのに否定するからだ」
「わからないからちゃんと言ってくれ」

 最愛が頼んでも、礼雅は言ってくれない。

「嘘だな。散々言ったんだ。いい加減わかっただろ?」
「本当にわからないんだ!」

 礼雅は観念したように息を吐いて、最愛の肩を掴み、そのまま抱き寄せ、もう片方の手で後頭部を撫でた。
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