この気持ちをあなたに伝えたい
「好きだ。最愛のことを好きなんだ」

 逃げ道なんてどこにも用意されないくらいの強い力で拘束されたまま、礼雅に告白をされて、最愛は呼吸することを忘れた。

「もう無理をする必要なんてない。頼ってくれていいんだ」

 今まで最愛は数多くの人達に表面上しか見てもらえなかった。

「お前が力を抜いても、俺は倒れたりしない。支えるから安心して俺に預けろ」
「くっ・・・・・・」

 ボロボロと涙が溢れて、何度拭っても涙が零れ落ちた。
 自分の中で抱え続けていた苦しみをどこにもぶつけることができず、自分の中に溜め込んでいた。
 だけど今、自分の気持ちを伝えたくて仕方がない。

「告白の返事は? 最愛・・・・・・」
「私も好きだ・・・・・・」

 最愛は自分の気持ちを押し殺していたので、やっと自分の気持ちに素直になることができた瞬間だった。

「色魔、あのさーー」
「ストップ!」

 最愛の口を礼雅が手で塞いだ。

「そろそろちゃんと名前で呼んでもいいんじゃないか?」
「・・・・・・礼雅お兄ちゃん」
「違うだろ。それだと今までと変わらない」

 最愛は今まで一度も礼雅を呼び捨てにしたことがない。初めてなので、妙に緊張した。

「れ、礼雅・・・・・・」

 きっと自分の顔は赤くなっているだろう。

「これからもそう呼べよ。恋人なんだから」
「こ、こ、恋人・・・・・・」

 その言葉を言おうとしたとき、かなりどもってしまった。
 最愛は礼雅の恋人になったことをすぐには実感できず、不思議な気持ちだった。

「いきなりあれこれ要求したりしないから」
「あぁ・・・・・・」

 それを聞いて最愛は安堵した。
 恋愛に臆病になっていることを美鈴から聞いたのかもしれない。
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