この気持ちをあなたに伝えたい
「最愛ちゃん、後でデザートも頼む?」
「ううん、結構ボリュームがあるから、絶対に満腹になる」

 デザートはまた今度レストランに来たときに食べればいい。

「満腹で思い出した。最愛ちゃんがご飯を食べ終わったとき、たまにお腹が風船みたいに膨らんでいたよね?」
「もう少しましなことを思い出してよ」

 最愛がそんなことを言っても、今更遅かった。

「何で? 狸みたいでいいよ」
「全然良くない」

 礼雅の例がひどかったので、それ以上話題を広げなかった。
 ここの店、予想以上に美味しかったので、次に来るときは誰かを誘って、ここで食べようと心の中で思った。
 四十分かけて食事を終え、大学について話をしていると、保が近づいてきて、最愛に話しかけた。

「最愛ちゃん、大学生になったばかりなんだよね? おめでとう。今日、デザートをサービスするよ?」
「いえ、もう入りそうにないので、ありがとうございます」

 やんわりと断り、保に皿を下げてもらった。
 忘れ物がないか、二回振り返って確認した。礼雅に食事代を支払ってもらっているときに保が最愛を一瞥した。

「またいつでも来てね」
「はい。とても美味しかったので、また来ますね」
「保、堂々と口説かない」

 礼雅が睨んでいても、保はにこやかに笑いながら平然としている。

「何だよ、妬いているのか?」

 からかうように言っている保をスルーして、最愛の肩を抱き寄せた。足が縺れそうになって焦っていても、礼雅はそのまま突き進んでいく。

「礼雅お兄ちゃん、ご馳走様でした」
「最愛ちゃん、気をつけなきゃ駄目だよ?」

 何に気をつけるべきなのか、最愛はわからなかった。

「保は年下の女の子が好きだからさ」
「わかった」

 最愛が返事をしたので、礼雅はちょっとほっとした。
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