この気持ちをあなたに伝えたい
 自分の部屋へ逃げて、パジャマと下着を両手で持って、風呂場へ行った。手を見ると、血が薄く滲み出ていた。服を脱いで、シャワーで全身を洗い流した。
 逃げることしかできなかった。外が暗かったせいで顔を確認することができなかったことに、歯ぎしりした。
 入浴後に風呂場から出て、自分の部屋へ行き、ドライヤーで髪を乾かして、歯を磨いてから布団に入った。すぐに寝てしまおうと思っていても、なかなか寝つくことができず、しばらくの間、音楽をかけながら本を読んでいると、知らない間に寝ていた。

「最愛、最愛、起きて」
「ん・・・・・・、お母さん?」
「やっと起きた」

 最愛を揺すっている母を見ながら、起き上がって外を見ると、まだ暗かった。

「どうかしたのか?」
「こんなところで寝ないで」
 
 小さなテーブルに顔をつけて寝ていた。音楽はすでに終わっていて、本は鞄の近くに転がっていた。

「ありゃりゃ」
「もう、ご飯を食べずに寝ちゃっているのだから」

 最愛はまだ何も食べていなかった。

「ご飯はあるか?」
「ちゃんと残してあるよ。食べる?」
「ああ、食べる」

 パソコンの画面の右下の時刻を確認すると、九時だった。こんな遅い時間に食事をすることは久しぶりだった。キッチンへ移動すると、テーブルに熱々のオムライスとコンソメスープ、サラダが置かれていた。オムライスもスープも作ったばかりで食欲をそそられた。

「今日はケチャップライスじゃないの」
「珍しいな・・・・・・」

 オムライスを作るときはいつもケチャップライスなのに、今日は違っていた。
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