この気持ちをあなたに伝えたい
「駅を出たところに美味しい店があるでしょ? 最近、友達とそこへ行って、とても美味しかったの!」
「自分だけずるいな・・・・・・」

 最愛が羨ましがっていると、早く食べるように促した。

「だから作ったの! 食べて!」
「ああ・・・・・・」

 小動物が尻尾を振りながら、遊びやご飯を強請っているような表情を向けられた。

「いただきます・・・・・・」
「召し上がれ」
「美味しそうだな」

 一口食べてみると、美味しく、黙って食べていると、美味しいかどうか質問された。最愛が美味しいことを伝えると、母が両手で万歳している姿を見て、幼さを感じた。

「お母さんの作るものはどれも美味いからな」
「娘にそう言ってもらえて本当に嬉しい! これからも頑張るからね!」
「あぁ・・・・・・」

 抱きしめられて顔が火照っているので、お茶を飲んだ。幸い、当の本人に気づかれていない。

「可愛いね、最愛は。ちょっと抱きしめるとすぐに照れるから」
「なっ!」
「ふふっ・・・・・・」

 前言撤回。自分の母は本当に油断ならない人。
 顔を上げると、母が柔らかい笑みを浮かべているので、何も言えなくなり、オムライスを食べることにした。母はそっと最愛から離れて、洗い終えた皿を拭き始めた。
 食べ終えて二度目の歯磨きをしてから今度はきちんと布団の中へ入った。この日は悪夢を見てしまうのではないかと怯えていたが、何も見なかった。

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