俺は、危険な彼に恋をした。
『……お母さん…お父さん…』
『洸!お前はあっちに行って居ろ!』
『…えっ。』
『美奈!洸を連れて行くんだ!早くしろ!』
『まっ…て、お母さん…?お父さん…どうした…の?ねぇ…いった…い。』
あの日の事は今でも覚えている。
忘れられない最悪で、最後の……
──────***──────
「……うっ…。」
重たい瞼をゆっくりと開けると真っ先に見慣れない天井が視界に入る。
「……ココ…は。」
いつの間にか、俺は和風感に包まれた居間で、布団の中で横になって居た。
「よ一やく目が覚めたか。」
「え…?」
俺が、横になっているその隣で胡座をかきながら俺の顔をじっと見詰めている人物は、俺の家に居た鈴音 璃空と名乗っていた男だった。
会った時は黒服だったけど、いまは、和服を着てる。
「俺、何でここに居るんだ……。」
意識がまだ、朦朧とする中で口を動かす。
「倒れたんだよ、昨日。多分、雨にうたれ過ぎたんだろ一な。ここは、俺の屋敷だ。倒れたお前をここまで連れてきた。」
「ここ…お前の家なのか?」
「そ一だが。」
「まじかよ、最悪…俺、帰る。」
そう言って布団から身体をおこすと、腕を掴まれた。
「帰るって、まだ安静にしていないと駄目だ。」
「帰ってからでも、それは出来るからその手離してくれない?」
「駄目だ。お前は、ここに居ろ。」
「嫌だって言ってんだろ!何で俺がお前の家に居ないといけない訳?理由でもあんの?」
「それは…」
「無いんなら、俺はしらない家には居られない!」
ぱしっと璃空さんの腕を振り払いその場から急いで立ち去る俺。
襖を乱暴に開けると、和風系な庭が目に飛び込んだ。
広々と広がる庭に俺は、つい目を止めた。